for Doctors

整形外科医の道標 ①専門医試験まで 

今回は整形外科後期研修医向けに、整形外科専門医取得までの流れについて解説します。

整形外科のSub-Speciality


初期研修が終わり、数ある診療科の中から整形外科医を志望した後は、3年間の後期研修医を経て専門医を目指します。

専門医を取得するまでに一通り整形外科全般を勉強し、専門医を取った後、さらに自分の専門(Sub-Speciality)を持つことが一般的でしょう。

整形外科学のSub-Specialityは、下記のように多岐に渡ります。


Sub-Specialityの分類の仕方は、大学医局や各施設で異なりますし、オーバーラップする事もあります。

今回はSub-Specialityを扱う前段階の登竜門である、整形外科専門医試験について概説します。

整形外科専門医になるまで

専門医試験の時期

整形外科では2017年度から新専門医制度が試行されたため、専門医になるための期間や受験資格に若干の変更がありました。

現在の整形外科専門医取得について、日本整形外科学会(以下、日整会)のホームページに以下のような説明があります。

日本整形外科学会認定整形外科専門医は、日本整形外科学会会員となり日本整形外科学会の認定施設で臨床研修6年完了後、受験資格が得られます。

ただし、卒後初期研修期間2年間は日本整形外科学会に入会していなくても必要研修期間として申請することができます。したがって、初期研修終了後、後期研修プログラムに参加し、同時に日本整形外科学会に入会すれば、4年後には整形外科専門医の受験資格が得られます。

                             引用:日本整形外科学会HPより


初期研修が終わり整形外科を志望すれば日整会に入会すると思いますが、学会入会後4年が経過すれば受験資格が得られることになります。

新専門医制度導入により、以前と比べて専門医受験時期が1年早まったことになります。

専門医資格を1年早くゲットできるメリットもありますが、その分研修期間が1年短くなるので要領よく凝縮した研修生活を送る必要があります。

受験資格

日整会入会後4年で専門医受験資格が発生することは前述の通りですが、他に必要な受験資格について解説します。

日整会ホームページに、「整形外科専門研修プログラム整備基準」という項目があります。

1 専門医申請時に4年間以上の日整会正会員であること
2 整形外科専門研修満4年間で修了
3 日整会認定研修施設2ヶ所以上で3年間以上
4 指導医1名以上の日整会認定研修施設
5 教育研修講演30単位
6 1回以上の学術集会発表、1編以上の論文を作成
7 整形外科研修記録による研修歴管理
8 4年間の整形外科研修を終了後書類申請し、翌年1月筆答試験と口頭試験を受験、最短5
  年で専門医資格を取得

                            引用:日本整形外科学会HPより


注意が必要なのは、3・5〜7あたりでしょうか。

3:日整会研修施設2ヶ所以上で3年間以上

研修施設「2ヶ所以上」がネックになる場合があります。

大学医局に属していれば人事異動があるので問題はありませんが、初期研修終了後に整形外科医として民間病院に就職した場合には注意が必要です。

5:教育研修講演30単位

普通に学会や勉強会に参加していれば、30単位を取得するのは難しくないと思います。

しかし専門医試験受験のためには、各分野で必要単位数が定められているので、ある程度満遍なく講演を聞く必要があります。

必須分野5(骨・軟部腫瘍)の3単位は、日整会主催の骨・軟部腫瘍特別研修会へ参加が必須です。

骨・軟部腫瘍の単位が取得できる学会

・ 日本整形外科学会学術総会(1単位)
・ 日本整形外科学会基礎学術総会(1単位)
・ 日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会(2単位)


必須分野14(医療倫理・医療安全、医療制度等)は講演数も少なく、足りなくなることが多いので注意してください。

日整会ホームページの単位振替システムを上手く活用し、専門医試験申請までに必要単位数を揃えるようにしましょう。


教育研修講演30単位とは別に、日整会主催の骨・軟部腫瘍特別研修会も専門医試験申請時までに3講演聞くことが必須なので忘れずに。

6:1回以上の学術集会発表、1編以上の論文を作成

最初の発表は症例発表であることが多いと思います。

どの地域でも、若手Dr登竜門的な地方会が存在すると思うので、早い段階で発表を済ましておくのが良いでしょう。

また発表から間をあけずに(発表内容、質問内容などの記憶が鮮明なうちに)、論文を書くことを強くお勧めします。

7:整形外科研修記録による研修歴管理

整形外科研修カリキュラムに沿って、経験すべき診察・検査・手術・処置などの経験を積み上げていきます。

特に手術については、最低160例以上の経験が必要で、うち術者として80例以上の執刀経験が必要です。

日本整形外科学会症例レジストリー(JOANR)が開始され、専門医申請とも連携しています。

JOANRへの登録はまとめてやると大変です。溜めずに都度行うようにしましょう。

専門医取得のために準備するものは、思ったよりも多くて大変です。
早めから準備を開始しましょう。

申請に必要な症例や書類などは、受験年度により異なる可能性があります。

必ず専門医試験の申請要項(整形外科学会雑誌の第4号に載っています)を事前に確認しましょう。

専門医試験申請の流れ

ここからは具体的に専門医試験を申請する手順を解説します。

これから専門医試験を受験される方は、新専門医制度で研修を行っていると思います。

その場合は申請がインターネットで出来るので、一昔前と比べると格段に楽になっていますし、受験料も安くなっています。

毎年整形外科学会雑誌の第4号(最近は電子ジャーナルになっています)に、専門医試験についてのお知らせが記載されるので、見忘れないようにしましょう。

受験申請

受験資格の項目でお伝えした
 ・経験症例の登録
 ・自己評価の登録
 ・日整会単位の登録
 ・学術活動の自己申告
の4項目を全て満たしていれば、日整会のホームページ上から受験申請できます。

受験申請期間は10月1日〜11月30日です。

受験申請は、日整会ホームページのマイページ内にある「専門医申請」から行えます。

最近6ヶ月以内の顔写真をアップロードする必要があるので準備しましょう。

また試験当日に本人確認書類(日整会のICカードや運転免許証など)が必要なので、忘れずに持参しましょう。

受験料納付

専門医受験申請画面に決済システムがあり、クレジットカードで決済する必要があります。

受験料は50,000円で、納付期限は受験申請と一緒で11月30日までです。

郵便振替も可能ですが、クレジットカード払いが簡単ですね。

整形外科専門研修プログラムの修了判定

1月1日以降に、日整会ホームページの会員マイページから、専門研修プログラムの最終的な修了判定を受ける必要があります。

修了判定は各プログラムの統括責任者が行います。

3月31日までに、この修了判定が済んでいないとダメなので、専門医試験までに終わらせてしまうのが良いでしょう。

試験

例年試験は1月下旬に行われます。

最近はCovid-19の影響で密を避けるため、各都道府県でCBT形式の試験が行われています。口頭試験はありません。

以前の専門医試験について

以前のように学会も現地参加の流れに戻ってきており、今後は専門医試験もCovid-19流行前に方式に戻る可能性もあります。

参考までに以前の専門医試験についても記載しておきます。

2日間の日程で、初日が筆答試験、2日目が口頭試験です。

医師国家試験以来、久々の筆記試験です。

筆記試験は鉛筆でのマークシートタイプで、通信機器は一才持ち込み禁止です。

大勢の試験官(専門医試験の問題作成者:著名な先生方)が前に鎮座されていますし、受験者もギリギリまで勉強している方が多く、異様な緊張感です。

口頭試験はホテルの1室で、受験者1人と試験官2人で行われます。

ビデオで症例提示され、試験官からの質問に順次答えていく、という流れです。

口頭試験は緊張する方も大勢いるでしょうが、受験者を落とすための試験ではないですし、分からなくても試験官が優しく答えまで誘導してくれるので大丈夫です。

大切なのは筆記試験で合格点を取ることでしょう。

合格発表

試験の合否は2月末に日整会ホームページ上(会員マイページのトップ画面、「学会からのお知らせ」)で発表されます。

合格者の一覧は整形外科学会雑誌の第4号でも公表されます。

晴れて専門医試験に合格したら、専門医の登録を忘れずに行いましょう。

こちらも有料です。
クレジットカードもしくは郵便振替で支払い可能で、2月末日が期限です。

新専門医制度では登録料26,000円(登録料15,000円+日本専門医機構の認定料11,000円)で、登録後3ヶ月程度で日本専門医機構から認定証が送付されます。

合格発表から専門医登録までの期間がとても短いの、くれぐれも注意して下さい。
登録が遅れた場合、あらためて受験が必要になってしまいます。

これで手続きは終了です。
お疲れ様でした。

まとめ

今回は整形外科医となり、整形外科専門医受験までの流れを概説しました。

専門医試験はあくまで通過点であり、日整会では専門医取得後の生涯研修として
 大学院で研究
 Sub-Specialityを極める
 地域医療を極める
などを挙げています。

また整形外科の専門医制度は2階建て構造となっており、整形外科専門医はあくまで土台の1階部分です。

次回は整形外科専門医としてのキャリアアップについて解説します。