大学病院で膝関節・スポーツ外傷を専門に扱う筆者が、半月板損傷に対する基本事項から手術手技、リハビリまで網羅的に解説します。
教科書より簡潔に、実臨床に必要な部分を中心に記載していきます。
第1回 半月板の構造と機能
第2回 半月板損傷の診断
第3回 半月板損傷のMRI読影術
第4回 半月板損傷に対する保存治療
第5回 半月板切除術
第6回 半月板縫合術
第7回 MMPRT・Centralization
の順に解説していきます。
今回は第1回として、半月板の構造と機能について解説します。
基本的事項ではありますが、治療を考える際には大切になる内容なので、しっかりと理解しましょう。
半月板の構造
肉眼的構造
半月板は膝関節の内・外側に存在し、内側半月板(以下、MM)はC型、外側半月板(以下、LM)はO型の形態をしており、前角・後角だけでなく、内側側副靱帯や膝横靱帯、半月大腿靱帯(Humphery靱帯・Wrisberg靱帯)などで制動されています。
MMは全体が関節包に付着していますが、LMは膝窩筋腱部で関節包との連続が絶たれているため、屈伸時の可動性はLMの方が大きいという特徴があります。
組織学的構造
半月板は湿重量の約70%を水分が占めています。
残りの約30%は有機成分(細胞外器質や細胞など)で構成されていますが、その大部分はⅠ型コラーゲンです。
半月板は組織学的には2種類の線維(circumferential fibersとradial tie fibers)が直交するように配列し構成されています。
円周方向に配列するcircumferential fibersによって、垂直方向の荷重は円周方向へのhoopストレスに変換されます。
Radial tie fibersは関節包から発生し、大きな円周線維内に巣を張るように配列し、主に剪断力に対する役割があります。
半月板の血行
半月板の形態は胎生早期に獲得され、その頃は血管網が豊富です。
出生後に血管網は減少し、骨成熟後はの外周10〜25%程度となってしまい、残りの大部分は関節液からの栄養を受けることになります。
上図は教科書などで頻繁に見る図だと思いますが、半月板の外縁には血流が集中しているのが分かります。
血流が豊富な半月板外周を「red zone」、血流がない半月板内周を「white zone」、両者の間を「red-white zone」に分けて治療方針を検討することがあります。
以前は無血行野であるwhite zoneは半月板切除術の適応、血行野であるred zoneおよびred-white zoneは半月板縫合術の適応と考えられていました。
近年では半月板を温存することによるメリットを最大限に活かすため、手術手技の工夫や治癒促進剤を併用することで、無血行野に対しても積極的に半月板縫合術が行われるようになってきています。
詳細は第5回の半月板縫合術で解説します。
半月板の機能
半月板は膝関節が円滑に機能するためにとても重要な器官です。
半月板の代表的な機能は
・荷重伝達や衝撃緩衝
・関節の安定化
・潤滑機能
・固有感覚機能
などが挙げられます。
特に荷重や衝撃をHoop Stressに変換し、分散・吸収し軟骨を保護しています。
そのため半月板損傷を放置すると、軟骨へのダメージが蓄積し、変形性変化が進んでしまう可能性があります。
まとめ
今回は半月板の解剖や機能など、半月板に関する基本的事項の解説を行いました。
関節鏡視下手術の発展もあり、膝関節における半月板の重要性が再認識されています。
基本事項をしっかりと押さえたところで、次回は診断編として、特にMRIの読影技術に焦点を当てて解説します。