円板状半月板とは、通常より大きい形をした半月板のことです。
大部分が外側の半月板に発生し、「膝が痛い」「膝が伸び切らない」といった症状で、病院受診をする方が多い疾患です。
今回は円板状半月板に対し、症状や治療法などを詳しく解説します。
円板状半月板とは
半月板は脛骨関節面の辺縁を覆い、Cの形をしているのが一般的です。
しかし辺縁だけでなく脛骨関節面の中央部まで覆うことがあり、円板状半月板と呼ばれています。
先天的(生まれつき)な形態異常の一つですが、珍しい疾患ではなく、日本人の約7%に存在するという報告もあります。
大部分が外側半月板に発生し、両膝に発生することが多いという特徴があります。
円板状半月板は、脛骨関節面を完全に覆う完全型円板状半月板と、完全には覆わないが通常の半月板よりも大きい不完全型円板状半月板に大別されます。
円板状半月板の症状
円板状半月板は先天的な形態異常なので、通常の半月板損傷より若年の患者さん(10歳以下)も比較的多く見られます。
若年の患者さんでは膝が原因なのに、股関節や太ももなど、違うところの痛みを訴えることがあるので注意が必要です。
一般的な症状として、通常の半月板損傷と同様に、膝の痛みや可動域制限、引っかかり感やロッキングなどが見られます。
可動域制限では特に伸展制限(膝が伸び切らない)がメインとなります。
幼少期は無症状で経過し、大人になって病院を受診される方も大勢いらっしゃいます。
やはり痛みや伸展制限が主な症状となります。
しかし円板状半月板は先天的な異常であり、長期間の経過で下肢の変形や変形性関節症を伴っている事もあり、半月板だけが症状の原因とは限りません。
円板状半月板の画像診断
膝の痛みで外来を受診した場合、まず最初に撮影するのはレントゲンです。
円板状半月板は骨以外の組織なので、直接レントゲンには写らず、多くの場合レントゲンは正常です。
そのため、円板状半月板の確定診断にはMRIを要します。
円板状半月板の手術適応
円板状半月板の手術適応は、ロッキングを生じている症例、保存加療(投薬やヒアルロン酸注射、リハビリなど)で症状が軽快しない症例などが挙げられます。
MRIで偶然発見された症状のない円板状半月板は手術の適応にはなりません。
・ ロッキングを生じている場合
・ 3ヶ月程度保存加療を行なっても、症状が改善しない場合
円板状半月板の手術方法
円板状半月板は形の異常だけでなく、内部構造(線維の配列など)にも異常があります。
そのため構造が脆弱で切れやすいという特徴があります。
以前は円板状半月板に対し、損傷部分を全て切除することが一般的でした。
結果的に半月板のほぼ全てを切除することが多かったですが、最近は半月板縫合術の進歩により半月板を温存させることが可能になってきました。
円板状半月板に対する手術は、関節鏡というカメラを用いて、数ヶ所の小さい傷で低侵襲に行います。
まず大きい半月板を正常なCの形になるように中央部を部分切除し、残存した半月板が断裂している場合には縫合術を追加します。
これにより、半月板を温存することが可能になり、将来的な変形を予防できる可能性があります。
手術後は、半月板の形が変化するため、関節軟骨や軟骨下骨(関節軟骨直下の骨)に加わる負担が増加します。
そのため手術後は荷重制限をする方が安全と考えられています。
また縫合術を併用した場合は、手術後に膝を2〜3週間程度固定することが多く、切除術単独よりもリハビリに少し時間を要します。
円板状半月板自体や、円板状半月板切除後の長期経過により、下肢変形や変形性膝関節症を起こしている場合は、関節鏡での治療だけでは症状改善が見込めない場合があります。
膝周囲骨切り術や人工関節置換術を要する場合もありますので、担当の先生と相談して、適切な治療方法を選択してください。
まとめ
今回は先天的な形態異常である円板状半月板について解説しました。
無症状でたまたま発見された円板状半月板は治療の適応にはなりませんが、円板状半月板が原因で「膝の痛み」や「膝が伸びない」方は、適切な診断・治療が必要です。
保存加療が第一ですが、最近は半月板縫合の技術進歩により、以前よりも半月板を温存することが可能となり、将来的な変形を予防する試みが行われています。
また若い頃に円板状半月板を大部分切除したことが原因で、長期間経過した後に変形性膝関節症(特にX脚)に至ってしまった患者さんにも時々遭遇します。
そういった方々に対しては膝周囲骨切り術で対応することが多いですが、こちらも技術進歩により、手術成績が格段に向上しています。
膝の症状がある方は一度、近くの整形外科で相談してみてください。
次回は膝蓋骨脱臼を取り上げます。