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【整形外科専門医が解説】変形性膝関節症の治療③ 関節鏡手術

前回までは変形性膝関節症の治療の中でも、保存加療(手術以外の治療法)について解説してきました。

保存加療で十分な除痛が得られず、日常生活に大きな支障をきたしている場合には手術が考慮されます。

現在は保険適応外ですが、2015年に厚生労働省が認可した再生医療は、保存加療と手術の中間的位置づけにある治療法であり、今後の発展が期待される分野の一つです。

変形性膝関節症の手術は
 関節鏡視下手術
 膝周囲骨切り術
 人工膝関節置換術
の3つがありますが、今回は関節鏡手術について説明します。

関節鏡視下手術とは

関節鏡視下手術は、関節鏡を用いて関節内をきれいに整え、痛みを抑える手術方法です。

関節鏡視下手術の最大のメリットは、皮膚を大きく切らないので体への負担が小さく、日常生活への復帰が早いことです。

1cm弱の小さな傷口を2〜3ヶ所作り、そこから関節内を観察する4mm程度のカメラや、手術器具を出し入れして手術を行います。

我々はカメラの映像を映し出すモニターを見ながら手術を進めます。

変形性膝関節症では、関節軟骨や半月板が傷んでおり、その結果刺激された滑膜が炎症を起こして痛みや水腫を引き起こします。

関節鏡を用いて傷んだ関節軟骨や半月板を取り除いたり、炎症して肥厚した滑膜を切除することで関節の中をきれいに掃除して症状を改善させます。

また関節鏡視下手術は関節内に清潔な水を灌流させて行います。
そのため関節内に溜まっている痛みの原因となる炎症性サイトカインを洗い流す働きもあります。

関節鏡視下手術のメリット

関節鏡視下手術の最大のメリットは、体への負担が少ないことです。

そのため、既往が多く他の大きな手術が行えない患者さんや、仕事が休めず短期間で治療を行いたい患者さんなどに適応があります。

また変形性膝関節症の患者さんの中で、痛みよりも関節水腫(膝に水が溜まること)や半月板由来の症状(引っかかり感やロッキング症状など)がメインの患者さんでは十分な効果が望めることもあります。

関節鏡視下手術が適応となる患者さん

・ 持病が多く、他の根治的治療が行えない場合
・ 早期社会復帰を望む場合
・ 痛みよりも、関節水腫や半月板由来の症状がメインの場合 など

関節鏡視下手術のデメリット

一方、関節鏡視下手術のデメリットは、関節内の病変にしかアプローチできないことです。

変形性膝関節症では、関節軟骨や半月板にダメージが蓄積し、最終的には骨の変形を来たします。

関節鏡はあくまでも関節内の病変しか処置することができず、骨に対する治療はできません。

そのため、変形性膝関節症の病期が進んでいる患者さんへの徐痛効果は長続きしないことが多いことが知られています。

まとめ

今回は変形性膝関節症に対する手術の中で、関節鏡視下手術に焦点を当てて解説しました。

関節鏡視下手術は体への負担が比較的小さく、早期社会復帰が見込める術式です。

しかし効果が限定的(長続きしない)であることが多いです。

膝の痛みが強い患者さんで、持病が多く大きな手術が困難な場合や、仕事の都合であまり時間が取れない方には適応があると考えられます。

次回は変形性膝関節症に対する根治的治療である膝周囲骨切術について解説します。