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【膝・スポーツDrが解説】半月板損傷の治療② 半月板損傷の診断

大学病院で膝関節・スポーツ外傷を専門に扱う筆者が、半月板損傷に対する基本事項から手術手技、リハビリまで網羅的に解説します。

今回は第2回として、半月板損傷の診断について扱います。

教科書より分かりやすく、実臨床に即した内容となっています。

半月板損傷に対する治療指針

半月板損傷の主な症状

実際の外来においては、紹介状持参で既に半月板損傷の診断がついている場合を除けば、半月板損傷を診断するところから始まります。

問診→診察→画像検査の順に進んでいきます。

具体的に半月板損傷ではどういった症状が出現するのでしょうか?

半月板損傷に限ったことではありませんが、受傷機転やその後の症状の経過はとても大切な情報です。

受傷直後であれば、損傷部位に一致した痛みや関節水症を認めます。

損傷が半月板の辺縁まで及んでいる場合は関節血症を認めることもあります。

関節血症では前十字靱帯損傷や膝蓋骨脱臼を疑うことも大切です。

その他半月板損傷の典型的な症状には、階段昇降やしゃがみ込み動作などの運動時痛、膝の引っかかり感(catching)やコキッとした音(click)などがあります。

膝の捻り動作が困難となり、損傷部位によっては膝を伸ばし切ると痛い、正座が出来ない、などの症状を訴える患者もいます。

半月板損傷の主な症状

①急性期
  膝の痛みや関節水症・血症
  ロッキング など

②慢性期
  運動時痛や運動後の関節水症
  特定の肢位やストレスで生じる痛み 
  catchingやclick など

半月板損傷の診察所見

急性期で痛みが強い場合、十分な局所所見を取ることが困難なこともありますが、画像検査の前に身体診察を行うことは必須です。

代表的な半月板損傷の理学所見を挙げておきます。

膝蓋跳動

慢性期になると認めないこともありますが、急性期や運動後の関節水症などは比較的よく見られる症状です。

可動域制限

痛みのために可動域制限や拘縮が出現することもあります。
ロッキングが生じている場合、伸展制限ではバケツ柄断裂や円板状半月板を疑います。
比較的珍しいですが深屈曲でのロッキングでは膝窩筋腱裂孔付近のLM縦断裂を疑います。

関節裂隙の圧痛

ほぼ必発の症状で、下記の誘発テストより感度・特異度が高いと言われています。
正確に関節裂隙を押していくと、ほとんどの症例で損傷部位に一致した圧痛を認めます。

各種誘発テスト

有名なものにMcMurrayテストやApleyテストなどがあり、損傷した半月板を捻ったり、挟み込むことで、痛みや異常音を誘発する徒手検査です。
どちらも特異度は70%程度で比較的高いですが、感度が低い(McMurray:38%、Apley:13%)と言われています。

特定の肢位での疼痛誘発

過伸展や過屈曲によって疼痛が誘発されることもあります。
過伸展では半月板前節の、過屈曲では半月板後節の損傷を疑うきっかけになります。

大腿四頭筋の萎縮
半月板損傷の慢性期では、ほぼ必発の所見です。

半月板損傷の代表的な診察所見

・膝蓋跳動
・可動域制限
・関節裂隙の圧痛
・各種誘発テスト(McMurrayやApleyテストなど)
・特定の肢位での疼痛誘発
・大腿四頭筋の萎縮

半月板損傷の画像検査

半月板損傷を疑う際に撮影すべき画像はXpとMRIです。

代表的な半月板損傷に対するMRIの読影方法は第3回で取り上げます。

ここではXpを中心に取り上げますが、当然半月板はXpに映らないので、他の損傷を除外するのが主な目的となります。

Xpは3方向(正面・側面・軸位)での撮影が基本ですが、患者が立位を取れるのであれば、Rosenbergや下肢全長正面も有用な撮影です。

Rosenbergは軽度屈曲位でのX線撮影法で、変形性膝関節症の初期変化を捉えることが出来たり(内側関節裂隙の狭小化)、Xpで円板状半月板を疑う(外側関節裂隙の拡大や大腿骨外顆関節面の平坦化)ことができます。

また最近では下肢アライメントの重要性が認識されており、可能なら下肢アライメント評価のため下肢全長正面も撮影すると良いでしょう。

半月板損傷に対する画像検査

すぐに撮影できるのは膝3方向のXp(正面・側面・軸位)
立位が取れるなら、Rosenbergや下肢全長も有用
円板状半月板を疑うならRosenbergは必須

MRIは半月板損傷の確定診断の他、損傷部位や損傷形態に有用

まとめ

今回は半月板損傷の診断について解説しました。

MRIがなければ半月板損傷を診断できない、というのは良くない診療です。

問診で受傷機転やその後の経過、どういう時・肢位で痛みが出るのかを詳細に聞き、実際に膝を触って半月板損傷を疑う、画像検査で診断を確定(他疾患を否定、合併損傷を確認)する、という一連の流れを大切にして下さい。

きちんとした診察を繰り返すことで診断能力は確実に向上し、画像に頼る頻度は少なくなっていきます。

次回はMRIの読影術について説明します。