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【膝・スポーツDrが解説】TKAの術前準備⑥ 臨床評価

大学病院で膝関節・スポーツ外傷を専門に扱う筆者が、これからTKAを始める整形外科医向けに、人工膝関節置換術(TKA)を行うための準備や手術のコツを解説します。

TKAの術前準備には
 ・ 診断
 ・ 術式選択
 ・ プランニング
 ・ インプラント選択
 ・ 臨床評価
などが含まれます。

今回は術前準備の最後として、代表的な臨床評価であるJOA score、KSS、KOOSについて記載します。

臨床評価の重要性

TKAは、膝の徐痛により機能回復が得られる非常に有効な治療方法です。

しかしTKAによって全ての問題点が解決しているわけではなく、新しいインプラントや手術手技が臨床的な改善をもたらすかは、長期的な追跡評価だけでなく、科学的に証明された評価法で立証することが不可欠です。

以前は医師主導型の臨床成績評価が多かったですが、最近では患者満足度が重要視されてきており、患者立脚型の評価方法が取り入れられてきています。

JOA score

JOA scoreは日本整形外科学会と日本膝関節研究会が合同で作成した評価方法です。

手術効果だけでなく、保存療法に関する評価も可能で、疼痛・歩行能、疼痛・階段昇降能、屈曲角度、関節腫脹の4項目から構成され最高点は100点となります。

機能障害の評価が主で、可動域の配点が多くなっている特徴があります。

                               日本整形外科学会より

New Knee Society score(KSS)

Knee Society scoreは1989年に作成され、2011年に改訂されました。

これまでは医師主導の評価方法でしたが、現在使われているNew Knee Society scoreでは患者立脚型評価項目が設けられるようになりました。

医師による評価項目は
・アライメント
・関節動揺性
・可動域
が主な項目です。

患者側の評価項目は
・膝の症状
・満足度
・期待度
・術前の活動性
の4項目、30個の質問からなります。

TKAの臨床評価として国際的にも推奨され、最も多く用いられている評価方法です。

2015年に日本語版が発表されました。

KSSの使用に際しては、Knee Societyへの使用申請が必要です。
(http://www.kneesociety.org/web/outcomes.html)

KOOS

KOOSはKnee injury and Osteoarthritis Outcome Scoreの略で、元々ACL損傷や半月板損傷、軟骨損傷などの膝外傷における臨床評価や変形性関節症との関連評価などに使用されていました

1998年に開発され、2011年に日本語版が発表と成りました。

評価項目は
・symptoms(症状)
・pain(痛み)
・function in daily living(日常生活における機能)
・function in sport and recreation(スポーツなど娯楽時の機能)
・knee related quality of life(QOL)
の5項目から成り、それぞれの項目が100点満点となっています。

KOOSは多くの日常生活動作に加え、スポーツ時の基本動作であるしゃがみこみ、走行、ジャンプなどの動作に対する機能評価が可能です。

近年TKA後にスポーツ活動を希望する患者も増えており、有用性が高い評価項目と考えます。

KOOSの日本語版を載せておきます。

まとめ

今回はTKAの術後成績に関する代表的な評価方法について記載しましたが、特に患者立脚型評価は患者に協力を得て行われる評価であり、患者の負担にならないように注意を払う必要があります

多くの評価法を一度に行うことは、回答数の多さゆえ回答意欲をなくす場合があるため避けた方が良いと思います。

自身へのフィードバックとしてはもちろん、将来の学会発表や論文発表のためにも、術前後で必ず評価を行い、記録を残すことをオススメします。